ゲーム開発者に聞いてみたいことってありませんか?
前回、ゲーム雑誌編集者に聞いてみたいことをTwitterで募集して、電撃ゲームス編集長にお話をうかがってきましたが、今度は、同じくTwitterでゲーム開発者に聞いてみたいことを募集しまして、それをPSP用新作、ダンガンロンパ希望の学園と絶望の高校生(以下ダンガンロンパ)を発売したスパイクにうかがって、プロデューサーの寺澤 善徳さんに聞いてきました。
スパイクには、この件だけでなく、ゲームってどうやって作るのか、という趣旨のインタビューもさせていただいてまして、そちらはAllAboutゲーム業界ニュースの方で読むことができます。よろしければ、あわせてご覧下さい。
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ゲーム雑誌編集者に聞いてみたい10の質問(田下広夢の記事にはできない。)
サイコとポップのまざりぐあいがゾクゾクする
ハイスピード推理アクション ダンガンロンパ
先に、寺澤さんがプロデュースしたPSP用タイトル、ダンガンロンパについて少しご紹介しておきます。ダンガンロンパは、私立希望ヶ峰学園という架空の学園に閉じ込められた15人の高校生の物語です。
15人の高校生は閉じ込められた校内で、自らを「モノクマ」と名乗る不気味で可愛いクマのヌイグルミの学園長に、とんでもないことを言われます。卒業して外の世界に出たかったら、仲間同士で殺し合いをしなければいけないと。モノクマはそう宣言するだけではなく、あの手この手で生徒達を精神的に追い詰め、殺人へと誘導します。
とうとう切羽詰った学生が殺人を犯すと、犯人を探し出す学級裁判が行われます。見事犯人をつきとめれば、犯人には、おしおきという名の死が待っています。逆に、犯人を当てられなければ、犯人以外の全員がおしおきされるという、命がけの学級裁判のはじまりです。
さあ、ここからがハイスピード推理アクションと呼ばれるダンガンロンパの真骨頂。生徒全員で行われる議論はリアルタイムに進行し、まるでテレビの討論番組のようにフルボイスで掛け合いながら、発言が文字となってテロップのように流れていきます。そこでタイミングを逃さず矛盾を見つけてロンパしていく、この臨場感がたまりません。
キャラクターデザインやグラフィック、全体の雰囲気もポップで楽しげ、15人の仲間ともだんだん仲良くなって楽しい学園生活が送れそう……という思い始めた頃に仲良しの生徒が殺されたりするサイコな展開。サイコとポップのまざり具合がたまりません。そんなゾクゾクを楽しみたい人は、是非、遊んでみてください。
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ダンガンロンパプロデューサー 寺澤 善徳さんへの10の質問
田下:それでは、よろしくお願いいたします。
質問1 開発者になってよかったと思いますか。また、満足していますか?
寺澤:よかったですね、やっぱり。いまスパイクだからっていうのもあるのかもしれませんが、新しいものにチャレンジすることができているので。それに、ユーザーさんの喜びの声を聞けるのは本当に嬉しいですから。
田下:やっぱりユーザーさんの声が嬉しいですか?
寺澤:もう、それが一番嬉しいですね。面白かったですよって言われるのが。ただ……現状に満足しているかって言われると、満足してない部分もあります。
田下:それは、どういうところに満足していないんでしょう?
寺澤:当然面白かったという声だけでなく、僕らがやりきれなかった部分に対しては厳しいご意見を頂くこともありますし、ユーザーさんの気持ちをもっと考えていかないといけないと反省しています。それと、まだ見つけていない面白いことがある、面白いものが作れるんじゃないかっていつも思っていますので。
質問2 売れてるゲームと売れてないゲームの違いはどんなところにあると思いますか?
寺澤:難しいですね。
田下:それが分かれば業界の誰も苦労はしないと言えば、それまでなんですが。
寺澤:一概には言えませんが、今の時代は少なくともプロモーションの比重はかなり大きいと思います。これもみなさん仰ってますが、「面白ければ売れる」わけではない、という難しい問題を抱えています。
田下:やっぱりプロモーションが大きいですか。それは、以前に比べてより大きくなってきているという印象でしょうか。
寺澤:大きくなってきてますし、これからもまだ大きくなると思います。ファミコン時代に比べてリリースされるゲームの数があまりに違いますし、これだけの情報過多な社会なので、面白くても「認知されない」「選ばれない」ことは多々ありますので。なのでインパクト・話題作りが大事なので、ついやり過ぎて失敗してしまうこともありました。今後はそういうことができるだけないように心がけています。その上でインパクトがあり、喜んでもらえるプロモーションを模索していきたいなと思っています。
質問3 ゲーム開発の為にプライベートでしていることはありますか?
寺澤:プライベートとは限らないかもしれませんが、なるべくストレスをためないようにしています。あと、健康に気を使ってます。
田下:それは、開発でストレスをためてしまうから、その分、プライベートではストレスを発散するようにしている、ということですか?
寺澤:そうですね、ストレスがたまりすぎると潰れてしまうので。業界的にもそういう人が増えてますから、って、きっと日本社会全体がそういう傾向にあるのだと思いますが。健康を維持することも当然大事で、元気でないと頑張れないし無理も出来ませんし、忙しい時期に体調を壊すのは周りにも大きな影響を与えてしまいますので。僕は運動が好きなので、スポーツを色々やることで、ストレス発散と健康維持が同時に出来てます。後は、映画を見るとか、本を読むとか、そういうことは普通にしていますよ。
質問4 開発メーカーをやめて独立するクリエイターを見て、どう思うか
寺澤:実績のある方々が多いですが、厳しい状況に自ら飛び込んで、チャレンジしている姿はとてもエネルギッシュで、本当に素直に尊敬していますし、業界を引っ張ってくれていることに感謝してます。険しい道だとは思いますが、そういう方達のタイトルは売れて欲しいなぁといつも思ってます。
質問5 ゲームハード間の移植は大変か、それとも少しの手間でできるのか?
田下:色んなケースがあると思いますが。
寺澤:うーん、まず、少しの手間でできるってことはあんまりないと思います。どんなケースでも、それなりに手間はかかります。後は、ものによって全然違ってきますね。
田下:例えば、ジャンルによって違うっていうことはありますか?
寺澤:ジャンルでいったら、パズルやテキストアドベンチャーだったら比較的楽で、3Dアクションは大変、みたいなことはもちろんあります。また、開発環境によって大きく左右されます。そういう意味ではメーカーやデベロッパーによって差が出ると思います。
質問6 今、ソーシャルゲームを作れと言われたら作る自信はある?
寺澤:開発できるかできないかで言えば、開発できます。でもそれを運営して、ビジネスとして成功させる自信があるかと言われれば、正直分からないです。ソーシャルゲームとコンシューマーゲームは考え方が全然違うので、コンシューマーが長い人ほど、考え方をチェンジできるのかっていうのが難しいところだと思います。
質問7 作っている開発者が楽しいと、できたゲームも良いものになる?
寺澤:これはたぶん逆なんじゃないかなと。開発者が楽しんで作ってないものは良いものにはなりえない、と言えると思います。開発者が楽しんでても、ユーザーさんには受け入れてもらえないものは結構ありますので。開発中は苦しいことの方が多いですけど、その中でどれだけ楽しみながら作れるか、というのは大事だと思っています。
田下:ちなみに、ダンガンロンパは楽しかったですか?
寺澤:楽しかったですねー。それ以上の苦しみもありましたけど。
田下:苦しさとセットなんですね。
寺澤:はい、そうなんです。だから楽しいだけっていうのは、今まで1度もないですね。たぶんゲーム作ってる人ならみんなそうだと思います。結局楽しさと苦しさの割合が違うだけですし、やはり結果によってもその感覚はずいぶん変わります。そんな中でもダンガンロンパは、楽しいことが多かったタイトルです。
質問8 ゲーム開発者募集の広告で、こんなことには騙されてはいけない、というようなポイントがあったら教えてください。
寺澤:……あまり人材募集の広告を見たことないですからね。どんないいことが書いてあるんでしょうか…。でもまあ、そもそも募集広告で分かることはあまりないと思います、なんていうとウチの人事に怒られてしまいますが。やっぱりその会社のゲームが好きだという気持ちが大事なのと、まずは飛び込んでみて欲しいなと思います。入ってみないとその会社に適応できるかは判りませんからね。
質問9 ゲーム開発者になったせいで、ゲームを遊んでもつまらない、みたいなことはありますか。
寺澤:つまらないことはないですが、他のゲームをやっていて、常に開発事情とか、なんでここをこうしたんだろう、ってことは考えちゃいます。、なるほど、これはこんな割り切り方をしてるのか上手い!とか。もっとこうした方がいいのに、という部分は、きっとこんな事情があってこうなったんだろうなって、考えてしまったり。純粋にゲームを楽しめてないっていうのはありますね。
田下:お客さんになりきれない?
寺澤:なりきれないことが多いですね。でも好きなゲームはできるだけそういうことを考えずに、とにかく楽しむようにしています。
質問10 ゲーム会社の広報ってどんな人がどうやってなるんでしょうか?
田下:いきなり、広報さんへの質問ですが、実際Twitterでこういう質問がありました。そして、インタビュー取材というものに広報さんが同席することは珍しくありません。というわけで、スパイクの広報担当中村 友さんにうかがいたいと思います。
中村:えっ? 私ですか。
田下:すいません、でも折角ですから。
中村:私のことを言うと、もともとはゲームの広報ではありませんでした。スパイクの前の会社で、その会社もゲームを作ってはいたんですが、私はゲームじゃない部門で、会社の広報を担当していました。
田下:それは、新作ゲームの紹介、というようなことじゃなく、会社組織が社会とコミュニケーションする窓口としての広報ですね。もともと広報畑の方だったんですか?
中村:そうでもないんですよ。手に職をつけないと将来が心配だなあと考えていた時期がありまして、何かできることはないかと考えていたときに、広報の職業につくことができたんです。
田下:その後スパイクへ入社するんですね。それは、やっぱりゲームと関係なく?
中村:いえ、スパイクはゲームの広報をしたいと思って入社したんです。もともと昔から家族とゲームで遊んだりしていて、ゲームを通した人と人とのコミュニケーションは素晴らしい、と思っていました。それで、ゲームの広報ができたらいいなと思ったんですね。
田下:ありがとうございました。いきなりですいません、でも、実はこの質問は大事だと思っていたんですね。僕は一時期、学生の就職活動をサポートするような活動もしていたんですが、ゲームの広報さんって職業は、学生の意識にほとんどないんですよね。ゲーム開発者はありますし、ゲームライターもあるかもしれませんが、ゲームメーカーの広報さんとか、営業さんになりたいっていう人は出会ったことがないんです。でも、ゲームの仕事だって色々ありますからね、そういうリアリティが必要なはずなんです、仕事を探すという時には。
中村:こういう仕事もあるんだよってことが、もっと言える場所があるといいですよね
質問11 ゲーム開発者を目指す人へのアドバイスをください
寺澤:月並みですし、みなさん言ってることですが、コミュニケーション力がないとダメです。日本語力が大事。
田下:AllAboutの方に掲載したインタビューでも、書いてあることが読む人によって違う意味にとれたりしないような仕様書を作ることが大事だとおっしゃってましたね。
寺澤:そうですね。読み解く力と、伝える力が大事です。それがずれた瞬間に大変なことになるので。
田下:というわけで、10の質問、+ゲーム広報さんへの1つの質問に答えていただきました。とても興味深いお話をいただくことができました、本日は本当にありがとうございました。