先日、Twitterに質問がきました。それは、
@TaoriHiromu 急にすいません。自分は高校生でゲーム雑誌のライターをめざしています。そこで質問なんですが、「今からでもやってると良い事」や「文章を書くときのアドバイス」などがあれば教えていただけませんか?
というものです。
自分の職業に若い人達が興味を持ってくれることは、とても嬉しいことです。というわけで「今からでもやってると良い事」「文章を書くときのアドバイス」をこの機会にまとめておきたいと思います。僕は、ゲームを得意分野とするライターではありますが、いわゆるゲーム専門誌に書くことは少なめなので欲しい答えとはズレてしまう所もあるかもしれませんが、何かの参考になれば、ということで。
「今からでもやってると良いこと」
1、ゲームを遊ぶ。
当たり前のことですが、ゲームを遊びましょう。ゲーム開発や、ゲーム屋さんの運営は、必ずしもゲームをたくさん遊ばなくては成立しない職種ではなかったりしますが、ゲームライターだけは、ゲームを遊んでないとできません。もちろん、ゲームしかしてないではダメですが、ゲームを遊んでいない人はスタートラインにも立てません。
この場合、目的はゲームを上手になることではありません。自分の中のゲーム体験を増やすことです。下手でもいいんです、ゲームが下手な人の視点について自覚的になれれば、それは役に立ちます。体験を増やし、なんらかの切り口で自分なりに消化していくことが大切なんです。
そして、ここでのゲームの遊び方が、ライターとしてのベースになる場合があります。例えば、シューティングゲームがすごく好きで、ありとあらゆるシューティングゲームをやりつくすようにプレイしていると、シューティングゲームに特化したライターさんになったりするわけです。
僕はゲームを遊んでいて、それが自分にとって面白いかだけでなく、どういう人たちが、どこで出会い、何に価値を感じて買っていくのか、みたいなことに興味がありまして、ゲーム業界ニュースというような記事を書くようになりました。
ただし、自分のゲーム体験がゲームライターとしてのベースになるからと言って、仕事が都合よく自分の得意な分野ばかりくるわけではないということも、付け加えておきます。フリーランスライターの場合は、色んな要望に応えて仕事をしつつ、自分の土俵で仕事ができるように自己プロデュースをしていかなければいけません。
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2、バイトをする
僕自身の経験とはちょっと違うんですが、ライターになる1番の近道はバイトだと思います。というか、ライターに限らず、どんな仕事でもとにかく現場の近くにいるというのが1番いいです。厳密にはバイトでなくても、インターンでも、居候でも、何でもいいです、現場に近づけさえできれば。
現場にいると、自分に何が足りないのかも分かります。ある程度は写真も撮れた方がいいとか、印刷やWebの知識を持っていると便利だとか、はたまたそういう知識が無くても働き方はあるとか、色んなことが分かります。色んなことが分かると、その選択肢の中で自分の働き方を模索し、その為に何を学ぶべきかもわかってきます。
とにかく飛び込んで、自分ができること、できないこと、できるようにならなければいけないこと、そしてやりたいこと、これを知って、そして必要な知識や技術を学んでいくというのがオススメです。
ちなみに、僕の経験とはちょっと違うというのは、僕はバイトではなく、本職としていきなり現場に突っ込んでいっちゃったところがちょっと違います。準備運動無しでフルマラソンするみたいな感じでえらい目にあいますが、経験はたまりました。
ライターの他にも、テレビのADの仕事や、美術ギャラリーの経営、フェイスペイントのメーカーの企画なんかをしてた時期がありまして、どれも七転八倒しましたが、今はそれら全てが財産になっています。自分の中で「どう働くか」というベースを早めに作っておくのは後々すごく効いてきます。
3、人に会う
出版関係の企業さんかなにかの正社員とか、そういう働き方ができれば別ですが、フリーランスでライターになったとしたら、1番大事なのは文章を書くことではなく、文章を書く仕事をとってくることです。つまり営業。積極的に色んな人に会って、相手の困っていることを聞き出し、自分ができることを提案し、仕事を作っていく作業です。これができなければどんなに素晴らしい文章が書けてもお金にはならず、逆に営業さえできれば文章の能力がそれ程優れていなくても、食べてはいけるでしょう。
じゃあ人に会う練習を、といっても、友達と会ってもあまり意味はありません。普段の自分の行動範囲では出会わない人と会う方法を考え、実際に会って情報の交換をし、その後の関係を作っていく、そういう会い方を意識的にするというのがとても大事なんです。
まずは、会って話を聞いてみたい人をリスト化し、片っ端から会える方法を考えてみるというのもいいかもしれません。もちろん、ただ会えて話ができて良かったではダメですよ。相手が会えて良かったと思える何かを差し出す努力をすることも、忘れてはいけません。理想的には、もう1度会いたいと思ってもらえる、ここを目指したいところです。
「文章を書く時のアドバイス」
1、目的を持とう
ライターが書く文章には、必ず目的や、狙いがあります。誰に読んでもらって、何を伝え、それによってどういう価値を生むか、というような目的です。例えばゲーム紹介記事を書く場合に、RPGが好きな中高生男子に読んでもらって、他のRPGとの違いとその面白さを伝え、ゲームを選ぶ材料にしてもらう、みたいな目的を持つ、ということですね。Webだとこれに具体的な数字がくっついてくることもあります。何人に読んでもらえる記事か、というようなことです。
もし、ライターに文章の技術が必要であるとすれば、それはその目的を達成するための技術でなくてはいけません。目的を持たない文章をどれだけ書いても、ライターになるための文章の練習にはなりません。自分なりに目的を設定し、発表し、どのくらい達成できたかをリサーチし、試行錯誤を繰り返す形で文章を書くのは、ライターへの近道と言えます
2、取材をしよう
ライターを目指すのであれば、なんとな思いついたことを文章にするのではなく、取材をしたことを書くという意識を持つべきです。もしかすると、ライターになると特別な権限が貰えて取材ができるようになる、と思っている人もいるかもしれません。確かに、発表するメディアを持っていることで入れる場所というのは少なからずありますが、そんなものが無くても取材はできます。
ゲームのお店で働いている人はゲームを遊んでいるのか、取材してみたら意外な結果がでるかもしれません。あるゲームを大人から子供まで、色んなタイプの人にプレイしてもらって反応を見てみるのも面白いかも。電車でゲームを遊んでいる人がどんなタイトルをプレイしているか調べる方法はないか。
一応言っておきますが、取材に夢中になりすぎて人に迷惑をかけてはいけませんからね。そして、協力してくれた人には丁寧にお礼を言いましょう。
有名クリエイターのインタビューとか、何かご立派な取材を行なう必要はありません。しかし、体験を元に具体性を持った文章を書くという癖をつけることは、とても役に立ちます。
3、2度書こう
実際にライターになって仕事をはじめると忙しくて中々できないのですが、上記の2つとあわせるととても効果的な文章の練習方法です。つまり、同じ内容の文章を2度書く。正確には、同じ目的の文章を2度書くと言うべきかもしれません。
まず、あるテーマにそって、目的を決め、文章を書きます。そして少し日にちをあけて、その文章を全て捨て、もう1度新たに書き直します。タイトルや文章の表現はもちろん、全体の構成や情報の取捨選択についても検討し、必要なら再取材もかけられると最高です。
1度目に書く作業は自分の頭の中にある情報を顕在化させる作業です。それに対して客観的になれる時間をあけ、もう一度構成しなおす、表現しなおすことで、より最適な文章を制作するという練習です。これをすると、手癖で書いてしまってる部分を見なおすとか、書くべき情報を吟味する、なんてことに役立ちます。
ゲームライターについて書いた記事
色々偉そうに書いてしまいましたが、これはどちらかというとライターになってから、思い返せばこういうことが役にたったなあ、とか、あるいは今、こういうことが大事だなあと思ったようなことで、ライターになるためにこれらのことを意識して頑張ってたなんてことは全然ありません。それでも、何かの参考になれば幸いです。
最後に、ゲームライター、あるいはゲーム雑誌の編集者に関わる記事を僕はいくつか書いていますので、それらをご紹介して終わりたいと思います。
ゲーム雑誌ができるまで(AllAboutゲーム業界ニュース)
電撃ゲームズの編集長にゲーム雑誌を作る過程をお話していただきました。
ゲーム雑誌編集長に聞いてみたい10の質問(田下広夢の記事にはできない。)
同じく電撃ゲームズの編集長に聞いた10の質問。
ゲーム雑誌の記事に、メーカーは口出ししている?(AllAboutゲーム業界ニュース)
ゲーム雑誌とメーカーの関係について。
ゲームのススメ方のススメ(AllAboutゲーム業界ニュース)
ゲーム紹介文章の書き方について。
興味があればぜひ、読んでみてください。
それでは!