「ゲーム屋さんが選んだ良作!」というのは、発売後にあまり知られてなくて売れなかったけど、実際プレイしたら面白かったというゲームを、全国のゲーム屋さんが選んで、ユーザーに紹介していくという活動です。以前、この「田下広夢の記事にはできない。」でご紹介したことがあるので、ご存知の方もいるかもしれません。
【関連記事】
ゲーム屋さんが選んだ良作ゲーム(田下広夢の記事にはできない。)
その後、続報をお伝えしてはいませんでしたが、地道に、着々と、お店のみなさんと一緒にこの活動を続けておりました。実は、毎月1本、イマイチ売れてないんだけどこれは面白いよ! というゲームを店頭で紹介し続け、既に第7回となっております。
今回、その活動についてアスキー・メディアワークスさんから発売されている月刊ゲーム総合誌の電撃ゲームスさんでとりあげていただけることになりました。本日10月15日発売の電撃ゲームス本誌にて、電撃ゲームス編集長の千木良 章(ちぎら あきら)さんと僕の対談が見開き2ページで掲載されております。
さらに、その対談では入りきらなかったお話を、電撃オンラインさんで掲載していただいています。
【関連記事】
「ゲーム屋さんが選んだ良作!」について語りましょう(電撃オンライン)
そしてそして、さらにさらに入りきらなかったお話を「田下広夢の記事にはできない。」でご紹介しようと、こういうわけです。
ゲーム屋さんが選んだ良作×電撃ゲームス×電撃オンライン×田下広夢の記事にはできない特別対談企画というわけでございます。
それぞれ、良作とゲーム販売店とゲーム業界について、違う角度からお話しています。ぜひですね、全て読んでみていただけると、楽しめるんじゃないかと思います。また、この「記事にはできない。」では、前半に対談、そして後半はこれまでに良作に輝いたゲームをお店の写真とともにご紹介していきたいと思います。前にも同じことをいったような気がしますが、気合入れてディスプレイしてあるゲーム屋さんの写真って楽しいんですよー。
それでは、前置きが長くなりましたが、千木良編集長との対談から、どうぞ。
電撃ゲームス編集長 千木良 章×ゲームライター 田下 広夢 対談
「ゲーム屋さんが選んだ良作!」について語りましょう。
番外編@田下広夢の記事にはできない。
「ゲーム屋さんが選んだ良作!」ってなに?
田下 電撃ゲームスの方にも、電撃オンラインの方にも書いてはあるんですが、この記事を最初に読み始める人もいるかもしれませんから、まず、ゲーム屋さんが選んで良作ってなんなのかということについて、簡単にお話しておきます。
「ゲーム屋さんが選んだ良作!」は日本テレビゲーム商業組合という街のゲーム屋さん達が集まっている団体が主催しています。良作の決め方は、月に1回、まずお店の人で投票をします。条件は2つ。実際にプレイして面白かったゲームであること。投票時点で販売本数が10万本に達していないこと。その投票を元に、有志が最終的な審査を行い、その月にお店でオススメするソフトを決定します。
これは、その月1番の神ゲーを決めよう、というような議論をするためのものではありません。イマイチ売れなかったけど、発売からしばらくして、しっかりプレイしてみて面白かったものはもう一度お店から発信してユーザーに伝えていこう、という観点で選んでいます。そこら辺の詳しい話は電撃ゲームス本誌の方でお話してますので、ぜひ読んでみてください。
千木良 説明ご苦労様でした。
田下 疲れました。えー、それで、良作の話なんですが、せっかく「記事にはできない。」なんで、ちょっと変化球で、中古の話をしておきたいなと思います。良作は、発売された後実際に遊んで、それで面白いゲームを紹介するので、どうしても発売後時間が経ってからの展開になります。でも発売から1ヶ月とか2ヶ月とか経ったゲームってあんまり販促とかされないんですよ。で、なんでメーカーさんが発売1ヶ月ぐらいで広告、販促をやめてしまうかというと、中古が出回るから、というのが理由の1つとしてあるよね、という話です。
中古は本当に新作ゲームの売り上げを止めるのか
千木良 中古の話はお店とメーカーで利害が一致しないところもあって、ちょっとデリケートですよね。
田下 僕は少し誤解があるなと思うところがあってですね。例えばドラクエとかFFとか、そういうゲームは確かに1、2ヶ月もしたら中古がガンガン回り始めます。なんでガンガン回り始めるかというと、それはたくさん新品が売れているからです。
ゲーム屋さんが中古で儲けようと思うと、3つステップがあって、まず新品をたくさん売ること、そして売った新品をできるだけたくさん買い取ること、で、最後に中古として売るんです。例外はありますが、多くのゲーム屋さんは、新品を売らなきゃ中古の商売もないと考えています。最低限、自分のお店に足を運ぶ人が買ったゲームじゃないと、中古で買い取れないし、買い取れなければ、売れません。
千木良 なるほど。それは確かにそうです。
田下 で、良作に関していうと、10万本いかないゲームというのは、ぶっちゃけ中古もたいして回りません。それこそ3万本とか、4万本のゲームだと、お店だって仕入れているのは数本ですから。その仕入れた数本を売り切って、で、それをさらに買い取らなければいけないんですから。メーカーにとってそれぐらいの規模のゲームというのは中古の心配をする必要はあんまりないんです。
逆に、お店の方から見ると、すごく頑張って自分のところだけでもたくさん新品を売れば、その後中古の商売がくっついてくる構造になってます。実際、中古の売り上げが大きいお店というのは、新品の売り上げも大きかったりします。
千木良 あー、つまり10万本のところまでは、メーカーとお店の利害は一致してるんじゃないかと。
田下 そうです。その後、現実的な話として考え方が分かれていってしまうのはしかたがないとしても、そこまでは協力しようよと。で、ここが大事なんですが、要は、意欲的な新規タイトルこそ発売された後のプロモーションがもう少し積極的に行われるような状況にしたい、ということです。リスクが高いことも事実で、実際には非常に難しい話ではあるんですが。それでも、意欲的で新しいゲームが、遊ばれる前に消えていくというのは、どう考えてもゲーム業界にとってプラスだとは思えないんです。
千木良 ゲームって、発売して1ヶ月くらい経ってようやくユーザーの評価なんかも定まってくる感じですからね。販売状況的にはそこからというのはなかなか厳しいのが現実かもしれませんが。電撃ゲームスでも発売日以降のゲームも取り上げようというのはあって、「NO GAME NO LIFE」というコーナーで、発売された後しっかりプレイして、よかったゲームを紹介しています。
田下 あれ、すごいですよね。文章読むとライターさんがもうバッチリやりこんでるのがすごく伝わってきます。あのー、今回電撃ゲームスさんに掲載させていただいたから言うわけじゃないですけどね、これを読んでる方で、浴びるようにゲームの情報が欲しいっていうコアな方は、電撃ゲームス1度買って読んでみるといいですよ! ちょっと異常です、あの雑誌の文章の多さと濃さは。どんだけギュウギュウに書くんですか!どんだけインタビューしてるんですか!
千木良 僕らはうちの雑誌を読んでくれる読書さんが、毎月やりたいゲームが多すぎて困っちゃう、みたいな状態にしたいんですよ。よくやるな~って言われるぐらい、ヒーヒー言いつつ作ってはいます。(笑)
田下 ヒーヒーはともかく(笑)ゲーム業界全体で面白いゲームを次々にオススメしていけるようになるのが理想ですよね。「ゲーム屋さんが選んだ良作!」もそういったゲームを盛り上げていく活動になっていけばと思っています。
ユーザーは買ったものが全て
千木良 最後に、「ゲーム屋さんが選んだ良作!」をはじめたきっかけみたいなものを教えていただきたいんですが。
田下 「ゲーム屋さんが選んだ良作!」をなんでやり始めたのか、1番最初のきっかけって実はもう覚えてないんですよ。僕も、運営の中心になっている日本テレビゲーム商業組合の事務局長さんも、あれ、なんではじめたんだっけねって。
千木良 そうなんですか!?
田下 そうなんです。ただ、やるべき理由みたいなものは本当にたくさんあって、頑張ってるお店を応援したいって気持ちもあれば、新しいことに挑戦している作品の力になれないだろうかという気持ちもあります。でも、1番は、やっぱりユーザーさんです。
お客さんにとってのゲームって、買ったゲームですよね。買ったゲームしか遊ばないわけで、それが全てだと思うんです。面白いゲームを買えばいいですけど、つまらないゲームを買った時、もしかしたらそれっきりかもしれませんよね。そういうことを考えた時に、できることをやらなくちゃって気持ちがいつもあります。
千木良 売れてるゲームシリーズがあって、それは確かに売れるんだけど、いつのまにかだんだんユーザーとズレてきた、みたいなことってあると思うんですけど、その場合、ゲームそのものが面白く無くなったと思われかねませんよね。実際、そうやってゲームをやめていった人もいるとは思います。
田下 結局、面白いゲームを、ユーザーさんにきちんと届けていくしかないと思うんです。届けてなければ、面白いゲームが無いのとおんなじです。それはやっぱりお店の役割でしょうし、そういうことをしてくれるお店がたくさん増えて欲しいと思ってます。その為にも、「ゲーム屋さんが選んだ良作!」がもっともっと多くの人に知ってもらって、こんな面白いゲームがあるんだってきっかけになるように、頑張っていきたいと思います。ですので、電撃ゲームスさんも、ひきつづき、どうぞ宜しくお願いします。
千木良 こちらこそ、よろしくお願いします。
田下 というところで、お終いにしたいと思います。ぜひ、電撃ゲームス本誌の対談や、電撃オンラインの対談も読んでみてくださいね。それでは!
【関連記事】
「ゲーム屋さんが選んだ良作!」について語りましょう(電撃オンライン)
これまでに選ばれた「ゲーム屋さんが選んだ良作!」
千木良さんとの対談、いかがだったでしょうか。ぜひ、電撃ゲームス本誌や、電撃オンラインの方の記事も読んでみてください。さて、ここからは今までに選ばれた良作をご紹介していきます。初めにちょっと言っておくと、選び方として、月の頭に選考会をして、選考会から2ヶ月以内に発売されたタイトルで選んでいるので、場合によってはたくさんあって困ってしまう月もあれば、なかなか無くて困ってしまう月もあります。なので、あのゲームが入っていない、ということがあっても、それはどれかを選ぶ時にもれてしまったというだけで、良いゲームでなかった、ということではないですから、ガッカリしないでくださいね。
では、早速参りましょう!
第1回 極限脱出 9時間9人9の扉 【DS】
チュンソフトが開発し、スパイクから発売されたニンテンドーDSの新機軸アドベンチャー。チュンソフトのファンには売れても、新規タイトルということでそこからの広がりが難しいかったゲームです。チュンソフトのファンでなくても、しっかりとした物語を楽しみたいユーザーさんは居るはず、ということでより広い層にアピールを試みました。
エーツー日本橋 大きなコーナーにモニターまでついて、大変に贅沢な作りです。関係ないですが、このお店の方は今年E3に行った時に一緒に行動しててよーく知ってるんですが、すごい洋ゲーマニアだったりします。視察に行ったお店で10本購入しちゃうような。そういう人が、こういうゲームへの愛にあふれたお店で働いているって、ちょっといいなあと思います。
第2回 斬撃のレギンレイヴ 【Wii】
サンドロット開発で任天堂発売のWii用アクションゲーム。Wiiリモコンを見事に使いきった爽快なアクションなんですが、なかなかその面白さが伝わりにくく、苦戦。Wiiリモコンで斬る、Wiiリモコンで魔法を放つ、その気持よさをなんとか伝えようと、選ばれました。
USVファミーズ笠寺店 1個1個の写真が小さくてちょっと分かりにくいんですが、右下の写真が全体像ですね。ものすごい量の説明が手書きでしてあります。以前、サンドロットでレギンレイヴのディレクターをされている本間毅寛さんに直接お目にかかる機会があったのでお店の写真をご覧にいれたら、頑張ってるお店が多いのにすごく驚かれてました。
【関連記事】
イオナズンを撃ってみたい人へ(AllAboutゲーム業界ニュース)
第3回 勇者のくせになまいきだ:3D 【PSP】
良作の選考会では、知られていないけど面白いゲームをお店が発信する、というコンセプトがあるので、続編よりは新規タイトルを重視する傾向があります。もちろん、絶対的な基準ではありませんが。勇者のくせになまいきだ:3Dは続編ではあるんですが、まだあまり日本のユーザーに馴染みのないリアルタイムストラテジーの面白さを伝えるのにすごくいいタイトル、ということで選ばれました。
wanpaku茨木店 メチャクチャ頑張ってイラスト書いてますね。勇なまシリーズが全編パロディ満載で構成されているのを意識して、ちょっとエヴァ風にしてみたり、楽しんで作ってますねー。
【関連記事】
1万匹が生まれ、勇者と戦い、そして死ぬ。(AllAboutゲーム業界ニュース)
第4回 トロピコ3 【Xbox 360】
洋ゲーはクオリティのわりに知名度が低いゲームがたくさんあるので、タイトルが挙がることが多いんですが、トロピコ3はその中でも抜群の完成度の高さと圧倒的な知名度の低さを誇るゲームでした。こういうゲームを売るのは難しそうだ、と思いつつ、こういうゲームこそユーザーに知らせたい、ということで選ばれました。カリブ海に浮かぶ小さな島国の独裁者になって政治をするシミュレーションです。
メディオ!西市 トロピコ3はとにかくゲームが複雑、かつ、日本で売れてる似たゲームが無いので、中身の説明が難しいんですね。シムシティが近いですけど、やっぱり違う。で、このお店は、でっかいトロピコおじさんのポスターでインパクトをつけつつ、細かくゲーム中に使うアイコンなんかも印刷して、どういうゲームか伝えようと頑張ってます。ゲームに対する理解が高くないと作れないコーナーです。
【関連記事】
360の売れてない箱庭シミュが超面白い(AllAboutゲーム業界ニュース)
第5回 HOSPITAL.6人の医師 【Wii】
最初はDSで発売されたカドゥケウスシリーズの流れを組むタイトル。高難易度でコアゲーマーしか遊べなかったカドゥケウスシリーズから改良し、ライトユーザーでもWiiリモコンで天才ドクター気分を味わえるゲームになっていますが、肝心のライトユーザーにはそれを伝えるのが難しいんですね。じゃあ、お店できちんと説明して売っていこう、ということで選ばれました。
お宝創庫阿久比店 今まで紹介した写真と比べると、巨大コーナーというわけではありませんが、スゴクよくまとまってます。両側にあるお手製の手描きPOPが効いてますね。ホスピタルのロゴがアーチのような感じになっていますが、実はホスピタルというゲームにおいて、ロゴは結構重要な意味を持っていたりします。
第6回 ゴーストトリック 【DS】
逆転裁判シリーズの生みの親、巧 舟氏が手掛けるアドベンチャーゲーム。ストーリーや謎解きが楽しいのはもちろんなんですが、もう次から次に奇妙奇天烈なキャラクターがこれでもかってぐらいでてきて、それがまたヌルヌルヌルヌルとなめらかかつヘンテコに動くのは見てるだけでも楽しいぐらい。この楽しさをもっとたくさんの人に、ということで選ばれました。
お宝創庫 堀田店 ゴーストトリックというゲームは、モノからモノへ、タッチペンを使ってオバケである主人公が、トリツクという能力でとりついていって、で、とりついたものをアヤツルことで、運命を変えるゲームなんですね。その、トリツクとかアヤツルとかって仕組みを、立体的なPOPでうまーく表現しています。
第7回 メタルマックス3 【DS】
メタルマックス3は、これがまた人を選ぶゲームではあるんですが、ファミコンの頃の、荒削りなゲームの感覚、あれを懐かしいと思える人であれば、最高の1作とも言えます。じゃあ、そこのところをきちんと伝えて売ろう、と、初心者お断り、おっさんゲーマーいらっしゃい、ぐらいのことを言って、懐かしいっていう人にアプローチしようということになりました。
メタルマックス3はただいまお店で展示中ということで、まだお店の写真は用意できませんでした。この荒くれた感じがお店でどう表現されるのか、すごく楽しみなんですけどね。
これからも「ゲーム屋さんが選んだ良作!」をよろしくお願いします。
インタビューとゲーム紹介の2本立てということで、随分長くなっちゃいました。ここまで読んでくださったみなさん、ありがとうございます。最初のご報告から、随分間が開いてしまいましたが、これからは毎月、電撃ゲームスで良作に選ばれたゲームをご紹介していくことが決定しております。ぜひ、楽しみにしていただければと思います。
あ、それからですね、今回ご紹介した7作品、僕は全部プレイして、面白いのを確認しております。みんなそれぞれ、ここ!という面白さのポイントを持ったゲームです。気になる作品があれば、ぜひ、遊んでみてください。
それでは!