最近Twitterをやっていまして、こんな会話がありました。以下やり取りをかいつまんで引用します。
日本で4番目に多い名字 (tadaken_t) on Twitter
@TaoriHiromu お疲れ様です&はじめまして。All aboutでの記事いつも楽しみにしてます。TaoriHiromuさんはいつもどんなサイトを見て、研究されてるんですか?
田下 広夢 (TaoriHiromu) on Twitter
@tadaken_t インターネットよりは、身近な風景から得る情報の方が大きいかもしれません。例えば、スーパーマーケットを僕はよく観察します。(後略)
日本で4番目に多い名字 (tadaken_t) on Twitter
@TaoriHiromu ゲームの記事を、書くために、スーパーを観察ですか。やっぱりゲームを文化的なものと捉えられているからですか?質問ばかりですみません。
twitterより
たしかに、ゲームの記事を書くのにスーパーを観察するというのはちょっとおかしいかもしれません。もちろん、多くのゲームライターがスーパーを観察しているなんてこともありません。もしかしたら、そんなのは僕だけかもしれませんね。でも、僕からすると、すごくゲームの記事を書くのに役立つんです。
ゲームのことだけを考えて、ゲームの記事を書いても面白くない
大前提として、僕はゲームの記事を書くのにゲームのことだけを考えていては駄目だと思っています。もしゲームのことだけを考えて面白い記事を書こうとするなら、相当ゲームにはまっている必要があります。ゲームのことだけをどれだけ考え続けられるか、というより、ほかの事をどれだけ考えないでいられるか、というぐらいのはまり方です。
僕は365日、盆暮れ正月はもちろん、海外旅行に出かけていたとしても毎日必ずゲームをします。ゲームを全くしない人からみると、ちょっと異常です。でも、それぐらいでは普通、というレベルの話なんです。それよりももっともっと、ゲームに没頭している人達というのがこの業界にはいます。仕事も趣味も生活も全部ゲームが中心、なんて人がいるわけで、そういう人に比べると僕はたいしたことがありません。
では、僕がどういう発想をしているかというと、その真逆で、どれだけゲーム以外のことを考えてゲームの話をできるか、と思っているんですね。ゲーム業界にゲーム以外の考え方で切り込めば新しい面が見えてくる。それは、ゲームだけを考えている人からは生まれてこないはずです。
スーパーマーケットで分かること
ゲーム以外のことを考えるときに、僕がすごく大切にしているのは日常の風景です。特にスーパーマーケットというのは、色んな人が毎日訪れて、毎日必要なものを買って行く場所ですから、地域の文化や世の中の流れがダイレクトに反映され、定点観測をするのにかなり都合がいいんです。
例えばある時、週末に人が凄く増えていることに気がつきます。それも家族連れが。で、何をしているかというと、普通に買い物をしているんですが、スーパーの中の飲食コーナーで子供達が楽しそうにたこ焼きを食べていたり、ゲームコーナーなんかで遊んでいたりしてるんです。で、ピンと来るんですね。もしかして、不況になると、旅行とか、お金をかけた娯楽は苦しくなりますが、その代わりの役割をスーパーマーケットのようなところが果たすことがあるんじゃないかと仮説を立てます。
で、またしばらくして、高速道路が土日祝日1,000円になった時に、スーパーを観察します。そうすると、今度は随分人が減っている。しかも、家族連れが少ないんです。ああ、やっぱり、と思うわけです。
そこから考えを少し飛躍させて、じゃあ、家族で遊べるゲームはどうだろうか、と。Wiiで遊ぶパーティーゲームのようなものは、不況時に、家族で遊べる低価格の娯楽にはならないだろうか。景気のいい時の長期休暇と、景気が悪い時の長期休暇で、分かりやすい売上げの変化があれば記事になるかもしれない、と考えます。
これで、記事のきっかけのようなものができるわけです。その先は、近所のスーパーで起きた出来事をもとにした仮説では説得力を持ちませんから、数字のデータを集めてみたり、ゲームを作っている人や、ゲームのお店の人に話を聞きにいったりしてみます。で、記事にして説得力があって面白いというところまでたどりつけるようであれば、実際に書きます。もちろん、思いついたことが毎回そう都合よく記事になるわけじゃないんですけどね。
ゲーム以外のことを考えて書いたゲーム記事
実際に、記事になった例をご紹介しましょう。スーパーマーケットではないんですが、自動販売機のことを考えていて、それでゲームの記事にしたものがあります。
【関連サイト】
360の弱点 自販機に並ばない缶ジュース(AllAboutゲーム業界ニュース)
自動販売機で缶ジュースを買おうと思った時に、当然自分が飲みたいジュースを選ぶわけですが、それは自分で選んでいるようでいて、自動販売機で売られているジュースの中からしか選んでいない、ということに気がついた瞬間がありまして。
それを、売る側に立って考えてみると、いかにして自動販売機に自分のところのジュースを並べるか、というのがとても大切であるということでもあります。そこから発展させて、ゲームの販路の話に展開している記事です。
いくらXbox360がたくさんゲームソフトが発売されると謳っても、棚に並んでなければお客さんは買わないよ、という話ですね。
この他にもですね、掃除をしている時についつい読んじゃうマンガって面白いよなぁ、とか、友達や家族と食事すると1人の時よりもなんで美味しいんだろう、なんてところから書いた記事もあります。
【関連サイト】
そうじをはじめるとマンガが読みたくなる(AllAboutゲーム業界ニュース)
オンラインの醍醐味は皆で食事をする楽しさ(AllAboutゲーム業界ニュース)
それから、日常の風景という視点からは離れますが、他の仕事をしていて、いろんな人から聞いた話や考えたことをきっかけに、ゲームの記事にする場合もあります。Webサイト関連の仕事をしていて思いついたこととかですね、プロダクトデザインに関わる仕事をしていて思いついた記事とか。
【関連サイト】
動的ゲームと静的ゲーム(AllAboutゲーム業界ニュース)
ハテナブロックとクリボーはどっちが優秀?(AllAboutゲーム業界ニュース)
どれもこれも別に最初からゲームと結びつけて考えているわけではありません。ただ、僕が思うに面白い話というのはそこら辺に普通に転がっていてですね、でも意識しないと見逃してしまう。で、僕は面白い話が書けて、色んな人が読みにくればお金がもらえる仕事をしているので、そういうものを一生懸命探していると。
あるところから、ないところへ
僕の考える商売の基本は、「あるところから、ないところへ」です。ゲームの記事を、ゲームのことを考えて書いても、それは「あるところから、あるところへ」なわけで、相当頑張らないと価値がついてきません。
だから、ゲームと関係ない日常の風景なんかを大切にして、そこから発想することで、他のゲーム記事には書いていないような切り口の記事を目指します。これが、スーパーマーケットを観察する理由です。
そんなわけで、スーパーマーケットみたいな場所にいくとですね、味噌のコーナーのとなりにカップの味噌汁が売ってるのをみつけたりしては、カップの味噌汁はむしろカップスープのコーナーにまとめるべきだろう、買い置きの味噌とカップ味噌汁の2つを並べて検討する人はいないのだから、みたいなことをいつも考えていて、それがゲームの記事になったりしているんです。